ドミトリー・ショスタコビッチ作曲 オラトリオ「森の歌」作品81

いよいよ第7曲、終曲です。冒頭はホルンによるファンファーレで開始され、今回はいきなり合唱が開始されます。ちなみに拍子記号は7拍子ですが、これは完全な4+3拍子なので、演奏的には決して難しいことはないと言えますし、むしろ合唱としては歌いやすいかもしれません。

ムラビンスキー指揮 ソビエト国立響 スベトラノフ指揮 ソビエト国立響 アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィル

この第7曲の前半では合唱がフーガになっていて、短調や長調への移調も加えながら音楽的な変化を持たせています。テンポ的にはアレグロ(Allegro non troppo)なのですが、この支持に忠実なのはムラビンスキー盤くらいのもので、他は往々にしてテンポが遅めのようです。アシュケナージ盤は極端にしても、本来のテンポ感を守っている演奏が少数派なのは残念なところです。

エフゲニー・ムラビンスキー指揮 ソビエト国立交響楽団

前半の合唱が盛大に盛り上がって頂点に達した時、突如として場外のトランペットとトロンボーンが加わって壮麗なファンファーレを吹き始めます。場外と言っても舞台裏ではなく、通常は客席に配置されて演奏するようです。祝典的な雰囲気も一気に盛り上がりますし、しかも音楽的に自然な流れになっていて違和感もありません。

ちなみにこのファンファーレが加わる「101」でテンポは突然 Moderato に変わります。ここまでが Allegro で来ているため、ここで突然遅くなった感じになり、非常に厳かで壮麗な雰囲気が演出できる仕組みになっています。ですから前半は Allegro で演奏する必要があると思うのですが、逆に前半が遅かったとしてもここでそれ以上に遅くすることは難しく、そうでない場合にはテンポ変化が明確に出なくなってしまいます。

ユーリ・テミルカノフ指揮 サンクト・ペテルブルク管弦楽団(日本公演ライブ演奏)

その少し先、ファンファーレが盛大に終わるとともに、今度は第1曲と第3曲で歌っていたバス(バリトン)のソロがおもむろに歌い始めます。この「103」に入る直前の2分音符で全体に cresc (松葉開き)が指示されているのですが、なぜか弦にだけは付いていません。それとこの2分音符は次の小節(「103」)の頭にある8分音符とタイで結ばれていて、弦でも第1、第2バイオリンはそうなっているのですが、しかしビオラ以下にはこのタイがありません。細密画家のショスタコビッチにしてはやや不可解な部分なのですが、この譜面通りに演奏したとしても特に不都合もないですし、通常はあまり深く考えずにこのまま演奏しているようです。