ドミトリー・ショスタコビッチ作曲 オラトリオ「森の歌」作品81

冒頭です。非常に平和でのどかなハ長調の開始で、しかも4/4拍子、4分音符と8分音符がリズムをとっていて、半音を避けた全音階で押しています。これでもかというくらい平易で分かりやすい音楽ですから、ある意味でショスタコビッチの並々ならぬ決意と意気込みが感じられる冒頭とも言えるでしょう。

ちなみにこの冒頭部分では、この曲全体で使われる動機がまとめて紹介されています。単純で明快なものばかりですが、中でも3小節目にクラリネットで出てくる「タリラリラララー」という鼻歌みたいなフレーズは特に耳につくもので、循環形式のように何度となく出てくるので分かりやすく、また作品としての統一感も嫌みなく保たれています。

ウラディミール・アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

前奏が終わると「1」からバスの独唱が歌い始めます。ちなみに今回使用した楽譜は全音出版社の日本語版で、同じく合唱用のピアノ伴奏譜も出ています。言語上演が増えてきた最近ですが、以前はこの日本語版を使用しての演奏が主流でしたし、中には合唱団や児童合唱で出演して歌ったという方もいることでしょう。残念ながらまともな録音が手元にないのですが、この日本語版はなかなか歌いやすくて自然でもありましたし、できれば今後も取り上げてもらいたいと思う気持ちもあります。

ユーリ・テミルカノフ指揮 サンクト・ペテルブルク管弦楽団

上の続きです。バスのパートにも松葉開きと閉じが書き込まれていて、オーケストラと一体となった表現が求められています。